カーモデルで学ぼう!サスペンションの種類と特徴

カーモデルで学ぼう!サスペンションの種類と特徴
目次

はじめに:

私がプラモデルを作っていて感動するのは、自動車という複雑な機械構造を模型化して再現しているところです。
もともと機械的な構造物が好きなので、特にサスペンションとかシャフト、フレームに興味が引かれます。

本記事では、カーモデルを通じてサスペンションの種類と特徴を、私自身が実際に製作したプラモデル写真を交えながらご紹介しようと思います。
プラモデルにご興味のあるかたはもちろん、自動車ファンの方でプラモデルはやってない・・・ってかたも、ぜひご覧いただければ幸いです。

そもそもの話、サスペンションって。

サスペンションは、車の快適性と安全性に大きく寄与する重要なコンポーネントです。
ここでは、独立懸架と車軸懸架という2つの基本的なサスペンション形式を説明した後、「マクファーソン・ストラット」「マルチリンク式」「ダブルウィッシュボーン式」「トレーリングアーム式」「トーションビーム式」「ラバーコーン式」の6つのサスペンションの種類について、特徴やメリットデメリットを紹介したいと思います。

独立懸架と車軸懸架

独立懸架(インディペンデント・サスペンション)と車軸懸架(デペンデント・サスペンション)は、サスペンション方式の基本的な分類で、その動作原理と構造に違いがあります。

独立懸架(インディペンデント・サスペンション):

独立懸架では、各車輪が個別にサスペンションに取り付けられ、左右の車輪が互いに影響を与えずに動作します。
これにより、路面の凹凸に対する追従性が向上し、乗り心地やハンドリング性能が向上します。
独立懸架には、マクファーソン・ストラット式、マルチリンク式、ダブルウィッシュボーン式などがあります。

独立懸架方式の特徴:

独立懸架方式の主な特徴は以下の通りです。

  • 各車輪が独立して動作するため、片側の車輪が凹凸に乗り上げた場合でも、他の車輪が影響を受けにくい。
  • 車体とタイヤの接地性が向上し、路面からの振動や騒音が車内に伝わりにくくなる。
  • コーナリング時に車体のロールが抑えられ、ハンドリング性能が向上する。

こういうやつですね。これはストラット式です。

独立懸架方式のメリットとデメリット

特徴を踏まえて、メリットとデメリットをいくつか紹介します。

独立懸架のメリット:

  • 車輪が独立して動作するため、路面追従性が向上し、乗り心地が改善される。
  • スムーズなハンドリング性能と安定性を提供することから、高速走行やスポーツ走行に適している。
  • 車輪同士の干渉が少ないため、操舵時のタイヤの接地性が向上し、ブレーキ性能やトラクションも向上する。

独立懸架方式のデメリット:

  • 複雑な構造であり、製造やメンテナンスが難しく、コストが高くなる場合がある。
  • 複雑な構造であり、製造やメンテナンスが難しく、コストが高くなる場合がある。
  • 独立懸架の構造によっては、車輪のアライメントが狂いやすく、定期的なアライメント調整が必要になることがある。

独立懸架方式のまとめ

独立懸架は、高い性能を求める自動車に適したサスペンション形式ですが、その複雑さからコストやメンテナンスに一定の負担が伴います。
しかし、優れた乗り心地とハンドリング性能が求められる場合には、独立懸架は有効な選択肢となります。

車軸懸架方式の特徴

続いて、車軸懸架方式の特徴とメリットとデメリットも見ていきます。
特徴は以下の通りです。

  • 両側の車輪が共通の車軸に接続されており、片側の車輪の動きが他方にも影響を与える。
  • 構造がシンプルで、耐久性が高く、荷重やトルクに対する耐性が強い。
  • オフロードや荷物を運ぶ商用車などで採用されることが多い。

車軸懸架方式のメリットとデメリット

こちらも特徴を踏まえてメリット、デメリットを紹介します。

車軸懸架方式のメリット:

  • シンプルな構造であり、製造コストやメンテナンスが比較的低い。
  • 耐久性が高く、重荷重や荒れた路面での運用に適している。
  • トルクや荷重に対する耐性が高く、トラックやSUVなどに適したサスペンション形式。

車軸懸架方式のデメリット:

  • 両側の車輪が連動して動作するため、片側の車輪の動きが他方に影響を与え、乗り心地が劣ることがある。
  • 路面追従性が独立懸架に比べて低く、コーナリング性能やハンドリング性能に劣る場合がある。
  • 車軸懸架は車両の重量が増加しやすく、燃費性能に悪影響を与える可能性がある。

車軸懸架方式のまとめ

車軸懸架は、シンプルな構造と耐久性が求められる車両に適したサスペンション形式ですが、乗り心地やハンドリング性能では独立懸架に劣ります。
しかし、荒れた路面や重荷重を運ぶことが前提の車両には、車軸懸架は有効な選択肢となります。
耐久性と低いメンテナンスコストが重要視される商用車やオフロード車、SUVなどでは、車軸懸架が適切なサスペンション形式として採用されています。
ただし、高いハンドリング性能や乗り心地が求められる場合には、独立懸架の採用を検討することが望ましいでしょう。

サスペンション方式ごとの紹介

ここからは「マクファーソン・ストラット」「マルチリンク式」「ダブルウィッシュボーン式」「トレーリングアーム式」「トーションビーム式」「ラバーコーン式」の6つのサスペンションの種類について、特徴とメリット、デメリットを紹介していきます。

マクファーソン・ストラット式

世界で最も多く採用されているといわれる方式で、考案者のマクファーソンさんの名前から「マクファーソン・ストラット式」と呼ばれています。
マクファーソン・ストラット式は、一般的に前輪駆動車(FF車)や小型車に広く採用されているサスペンション形式です。
このタイプのサスペンションは、ショックアブソーバとコイルスプリングを一体化したストラットを使用しています。

写真は「青島文化教材社 1/24 FCサバンナRX-7」のフロントサスペンションです。

ロワアームとアッパーアームの構造が良くわかる良いキットですね(^^)/

マクファーソン・ストラット式の特徴:

特徴を整理してみます。

  • ショックアブソーバとコイルスプリングが一体化されたストラットを採用。
  • 構造がシンプルでコンパクトであり、スペース効率に優れる。
  • 車輪の操舵機能とサスペンション機能が統合されている。

マクファーソン・ストラット式のメリットとデメリット

とにかく世界中で採用されているのでおそらくメリットのほうが大きいのだとは思いますが、道具というのは「目的、用途」に対して「適したものを用いる」ことが重要ですからね。
そういう観点で、この記事のメリット/デメリットも感じていただければ幸いです。

マクファーソン・ストラット式のメリット

  • コンパクトな構造により、車体内部のスペースを有効活用できる。
  • 部品点数が少なく、製造コストやメンテナンスコストが比較的低い。
  • 一般的に軽量であり、車両の重量を抑えることができる。

これも青島文化教材社FCサバンナRX-7のフロントサスペンションです。
サスペンションユニットを組み立ててからシャシーに組み込むスタイルも面白いですね。

マクファーソン・ストラット式のデメリット

  • 車輪の動きに対して柔軟性に欠け、路面追従性が他の独立懸架方式に比べて劣る場合がある。
  • 操舵機能とサスペンション機能が統合されているため、部品交換が必要になると、全体の交換が必要になることがある。

マクファーソン・ストラット式のまとめ

マクファーソン・ストラット式は、シンプルでコンパクトな構造と低コストが魅力のサスペンション形式ですが、柔軟性や路面追従性では他の独立懸架方式に劣ることがあります。しかし、コストやスペース効率を重視する場合には、適切な選択肢となります。

マルチリンク式

マルチリンク式サスペンションは、複数の独立したリンク(アーム)を使用して車輪を支持し、サスペンションの動作を制御する方式です。これにより、車輪の動きが正確に制御され、高いハンドリング性能や乗り心地が実現されます。主に高級車やスポーツカーで採用されています。

マルチリンク式サスペンションの特徴:

レースやラリーカーなどでよく出てくるマルチリンク式サスペンション。特徴をまとめます。

こちらも「青島文化教材社 1/24 FCサバンナRX-7」のリアサス。
アームがいくつもあるのがわかりますよね(^^)/

  • 複数の独立したリンク(アーム)を使用して車輪を支持し、動作を制御する。
  • 車輪の動きや位置が正確に制御され、高いハンドリング性能を実現。
  • 乗り心地や路面追従性が向上し、快適な走行を提供。

マルチリンク式サスペンションのメリットとデメリット

マルチリンク式サスペンションのメリット:

  • 車輪の動きを正確に制御し、高いハンドリング性能と路面追従性を実現。
  • コーナリング時の車輪のキャンバー角変化を最小限に抑えることができる。
  • 乗り心地の向上に寄与し、快適な走行が可能。

マルチリンク式サスペンションのデメリット:

  • 複雑な構造と多くの部品からなるため、製造コストやメンテナンスコストが高い。
  • 重量が比較的重くなることがあり、車両の総重量に影響する場合がある。
  • 故障やトラブルが発生した際に、修理が複雑でコストがかかることがある。

たしかに、構造が複雑そうですよね・・。

マルチリンク式サスペンションのまとめ

マルチリンク式サスペンションは、高いハンドリング性能や乗り心地を提供するため、高級車やスポーツカーに適しています。ただし、コストや重量の面でデメリットがあるため、予算や車両の目的に応じて選択することが重要です。

トレーリングアーム式

トレーリングアーム式サスペンションは、独立懸架方式の中で比較的シンプルでコンパクトな構造を持ち、メンテナンスや製造が容易であるという特徴があります。そのため、コンパクトカーやSUV、商用車など、さまざまな車種で使用されています。ただし、車輪の動き制御においては、他の独立懸架方式(例:ダブルウィッシュボーン式、マルチリンク式)に比べて制御力がやや劣ることがあります。

トレーリングアーム式、トーションビーム式といえばSUV!
SUVといえばハイラックス!ですよね。

こちらは「青島文化教材社 トヨタハイラックス ダブルキャブ リフトアップ」です。

トレーリングアーム式サスペンションの特徴

  • アーム構造: トレーリングアーム式サスペンションでは、車輪を支持するアームが車体の前後方向に伸びており、片側1本または2本のアームで車輪を懸架します。アームは車体に対して前後にピボットし、車輪の上下動を制御します。

  • 簡潔な構造: トレーリングアーム式は構造が比較的シンプルであり、メンテナンスや製造が容易です。また、コンパクトな設計が可能であるため、車両のスペース効率に優れます。

  • 車輪の動き制御: トレーリングアーム式サスペンションでは、車輪のキャンバー角変化やトウ角変化を完全には制御しきれないことがあります。しかし、アームの設計や取り付け角度を調整することで、ある程度のキャンバー角変化やトウ角変化を緩和することが可能です
  • 路面追従性: トレーリングアーム式サスペンションは、路面追従性が比較的良好であり、乗り心地に優れています。

下の写真は車軸懸架というのが良く理解できる構造ですよね。
ハラックスはラダーフレーム構造なので特にわかりやすい上に、このプラモデルはリフトアップカスタムなのでさらに足回りの構造が把握しやすいです(^^)/

トレーリングアーム式サスペンションのメリットとデメリット

トレーリングアーム式サスペンションのメリット

  • 構造がシンプルであり、製造コストやメンテナンスコストが低い。
  • 車体のスペース効率が良い。
  • 耐久性に優れ、信頼性が高い。

セミトレーリングアーム式

トレーリングアーム式サスペンションのデメリット

  • 乗り心地やハンドリング性能が他の独立懸架方式に比べて劣る場合がある。
  • 車輪の動きの制御が限定的で、高性能車やスポーツカーには向いていない。

トーションビーム式サスペンション

  • 車輪間を横方向につなぐトーションビームが操舵とサスペンションの動作を制御する。
  • 車軸懸架の一種であり、主に小型車や中型車の後輪サスペンションに採用される。
  • 軽量でコンパクトな構造が特徴。

トーションビーム式サスペンションのメリットとデメリット

トーションビーム式サスペンションのメリット

  • コンパクトで軽量な構造により、車体内部のスペースを有効活用できる。
  • 製造コストやメンテナンスコストが比較的低い。
  • 車輪間の剛性が高く、安定した走行性能を提供する。

トーションビーム式サスペンションのデメリット

  • 左右の車輪が直接繋がっているため、路面追従性が独立懸架方式に比べて劣る場合がある。
  • 乗り心地やハンドリング性能が他の独立懸架方式に比べて劣ることがある。
  • 高性能車やスポーツカーには向いていない。

トーションビーム式とトレーリングアーム式サスペンションのまとめ

トレーリングアーム式とトーションビーム式のサスペンションは、どちらもシンプルでコスト効率に優れていますが、乗り心地やハンドリング性能が独立懸架方式に比べて劣ることがあります。このため、高性能車やスポーツカーには向いていません。

トレーリングアーム式サスペンションは、耐久性や信頼性に優れているため、オフロード車や商用車などに適しています。
一方、トーションビーム式サスペンションは、コンパクトな構造が魅力であり、小型車や中型車によく採用されています。
どちらの方式も、シンプルでコスト効率が良い点は共通していますが、用途や車両の性能要求によって適切なサスペンション方式を選択することが重要です。

ダブルウィッシュボーン式サスペンション

レースカーや高級スポーツカーのいめーじですよね。言葉の響きもサスペンション界では一番好きです。
一応ベタですが、ウィッシュボーンというのは一羽の鳥からひとつだけとれる胸と首の間にあるY字型の骨のこと。
上下アームの形がこの骨に似てるから「ダブルウィッシュボーン式」と言われます。

ダブルウィッシュボーン式サスペンションの特徴

  • 上下二本のウィッシュボーン状のアーム(Aアーム)で各車輪を支持し、サスペンションの動作を制御する。
  • 独立懸架の一種であり、主に高級車やスポーツカーの前輪・後輪サスペンションに採用される。
  • 車輪の動きやキャンバー角変化を正確に制御できる。

ダブルウィッシュボーン式サスペンションのメリットとデメリット

ダブルウィッシュボーン式サスペンションのメリット

  • 車輪の動きやキャンバー角変化を精密に制御できるため、優れたハンドリング性能と安定性を提供する。
  • 乗り心地が良い。
  • 車輪のアライメントが容易で、カスタマイズ性が高い。

ダブルウィッシュボーン式サスペンションのデメリット

  • 複雑な構造であり、製造コストやメンテナンスコストが高い。
  • サスペンション部品が多く、重量がやや重い。

ダブルウィッシュボーン式サスペンションのまとめ

ダブルウィッシュボーン式サスペンションは、独立懸架方式の中でも高いハンドリング性能と安定性を提供するため、高級車やスポーツカーに適しています。しかし、複雑な構造のため製造コストやメンテナンスコストが高く、車両の重量も若干増加することがデメリットとなります。そのため、予算や性能要求に応じて、適切なサスペンション方式を選択することが重要です。

ラバーコーン式サスペンション

ラバーコーン式サスペンションは、伝統的なコイルスプリングやリーフスプリングの代わりにラバー製のコーン形状のバネを使用するサスペンション方式です。このタイプのサスペンションは、イギリスの自動車メーカーであるミニが初代ミニ(オースチン・ミニ、モーリス・ミニ)で採用していたことで知られています。

ラバーコーン式サスペンションの特徴:

  • ラバー製のコーン形状のバネを使用し、ショックアブソーバと連動して動作する。
  • 構造が非常にシンプルで、コンパクトな設計が可能。
  • 乾燥した状態ではほぼメンテナンスフリー。

ラバーコーン式サスペンションのメリット、デメリット

ラバーコーン式サスペンションのメリット:

  • 部品点数が少なく、軽量であり、車両の重量を抑えることができる。
  • コンパクトな構造により、車体内部のスペースを有効活用できる。
  • シンプルな構造で、コストやメンテナンスが低い。

ラバーコーン式サスペンションのデメリット:

  • ラバーの劣化が進むと性能が低下し、乗り心地やハンドリング性能が悪化する。
  • 大きな荷重や熱に対する耐性が低く、長期間の耐久性に問題がある場合がある。
  • 高速走行やスポーツ走行に適した性能を発揮するのが難しい。

ラバーコーン式サスペンションのまとめ

ラバーコーン式サスペンションは、シンプルで軽量な構造が魅力ですが、耐久性や高速走行時の性能に課題があります。主に小型車や狭い道路での走行がメインの車両に適しており、高性能車やスポーツカーには向いていません。

全体のまとめ

もともと、何かを模型化(モデル化)することの目的が構造の理解や分析、教育材料だったと思いますので、それは当たり前といえば当たり前なのですが・・・。
そんなことはさておき、
サスペンションの種類や特徴をカーモデルを通して理解することで、自分の好みや用途に適した車を選ぶ際に役立ちます。また、サスペンションに関する知識は、車のメンテナンスやチューニングにも活かせるため、自動車に関心を持つ人にとって有益な情報です。