[解説]ITサービスマネージャ試験 2019年(令和元年)秋期 午後1 問1 テーマ:継続的サービスの改善

[解説]ITサービスマネージャ試験 2019年(令和元年)秋期 午後1 問1 テーマ:継続的サービスの改善
目次

テーマ:継続的サービスの改善

出典:令和元年度 秋期 ITサービスマネージャ試験試験 午後1 問1

改善プロセスに沿って、データを収集し、データの加工を通じて、社内サービス目標値やKPIの目標を達成できていない場合の原因を分析し、サービスとプロセスの改善方法を策定するまでの一連の実務能力を問う問題です。

問題文の構成

  • 冒頭序文
  • [サービスの利用状況]
  • [SDの改善]
  • [FAQ掲載方法の改善]
  • [本サービスの改善]

冒頭序文

  • H社のF事業部が営業支援業務クラウドサービスを展開
  • 技術課とデータ課とサービスデスク(SD)がある。
  • データ課が明示情報データ化サービスを提供。
  • SDが平日9:00-17:00で問い合わせを受け付ける。

利用者からの依頼からDB登録までの目標時間やサービス時間、FAQの存在など状況をざっくり把握しておきます。

  • 専用ソフトを使って情報をアップする。
  • 平日9:00-16:00に送信したものは60分以内に顧客DBに登録
  • FAQがある。
  • 電子メールで問い合わせできて、3時間以内に回答
  • 営業時間外は翌営業日の12時までに回答

[サービスの利用状況]

  • 大口顧客A社を担当するITサービスマネージャJ氏
  • 月次でサービス状況を報告
  • A社にアンケート
  • いままでアンケートしたことがなかった
  • 表1 A社に実施した顧客アンケート
  • 表2 継続的サービス改善の手順

表1 A社に対して実施した顧客アンケート調査の結果(抜粋)

改善プロセスの問題なので、当然「ネガティブ」なアンケート結果を押さえていく必要があります。

「氏名が誤って登録された」、「時間帯によって1時間近くかかる」、「電子メールでの問い合わせが面倒」、「メールで質問したが、最終解決まで1週間以上もかかった」など。

表2 継続的サービス改善の手順

さっそく改善プロセスを実行するぞ、ということでフレームワーク「7ステップ」をベースにした改善手順が提示されます。

7ステップの改善プロセス

  1. 改善の戦略
  2. 測定対象の定義
  3. データ収集
  4. データ処理
  5. 情報とデータの分析
  6. 情報の提示と利用改善の実施

この7ステップはITサービスマネージメントにおける改善手順の基本になりますので、しっかり頭に入れておきましょう。
午後2でも活用できる知識です。

[SDの改善]

  • 初回解答時間と最終解決時間に着目
  • 測定対象の定義として、サービス目標値達成状況を調査

(1)初回回答時間

  • 表2の手順③「データの収集」に従って、SDの問合せに対するデータを表3にまとめた

表3 A社からの9月分の問合せと対応状況

  • 表2の手順④「データの処理」に従って目標値の達成状況を調べた。
  • 表2の手順⑤「情報とデータの分析」に従って、初回回答時間の状況を分析した。
  • 達成が危ぶまれた事象があった
  • スキャナの障害かどうかSDで切り分けて対応できるように改善を進める

(2)最終解決時間

  • 最終解決までに1週間を超えたら再問合せやクレームになることが分かった。
  • 『問合せの受付日から完了日まで・・受付日含めて5営業日以内』ルールを設定
  • 4営業日を経過しても対応が完了してない問い合わせを”目標未達のおそれ”として抽出

F事業部長にレビューして、来月から実施となった。

[FAQ掲載方法の改善]

  • FAQを見れば利用者で解決できる疑問が問合せの10%ある
  • 問合せ数削減対策として「検索性を高める」
  • KPIを設定する

「KPI」が下線で設問になっています。
FAQの利用向上で問い合わせ数を削減する方策は頻繁に出てきますので、「効果の測り方」はしっかり頭に入れておきたいところです。
午後2でも活用できる知識になると思います。

[本サービスの改善]

  • 午前中の作業量が多いので、数年前から午前中に要員を増やしていた
  • 表1の結果で「カタログ目標値」達成が危ぶまれる事象を警戒

カタログ目標値

『平日9:00~16:00に送信された名刺は送信後60分以内に顧客DBに登録』

危ぶまれる事象

表1No3「1時間近くの時間がかかる」

1時間以内をうたっていながら、1時間近くかかっているということで、もう少しで1時間を超える可能性がある事象です。
どのデータを分析すればこの事象の対策が検討できるか、ということですね。

設問1 [SDの改善]について

設問1(1) 問題文

本文中の下線(ア)について、サービス目標の達成が危ぶまれた事象に共通する内容は何か。表3から判断して40字以内で述べよ。

設問1(1) 解答例

エスカレーション先が技術課の場合、初回回答までの経過時間が長い

設問1(1) ポイント解説

『達成が危ぶまれた』とされる「サービス目標」とはなにか?から押さえていきます。
問題文に「社内サービス目標値は達成していたものの・・・危ぶまれた」とありますので、「社内サービス目標値」のことを言っていますね。

では、社内サービス目標値がいくつだったかを確認します。
序文に「問い合わせに対する初回回答を3時間以内に返信」とあります。

ということで、3時間=180分に近い経過時間の問合せを探して見ると、No3の160分とNo7の175分が見つかります。

この2つの共通点はエスカレーション先が技術課である、ということになります。
エスカレーション先が技術課であるという共通点とともに、その場合「どのような事象が発生しているか」までを書くことが必要です。

設問1(2) 問題文

本文中の下線(イ)で設定すべきKPIは何か。40字以内で述べよ。

設問1(2) 解答例

エスカレーション先の技術課に依頼することなく、対応完了となった問い合わせの割合

設問1(2) ポイント解説

下線(イ)の前の文章を読んでみます。

『社内目標達成を確実にするために・・・SDで切り分けて対応することができる手順書を整備するなどの改善策』とあります。

SDで切り分けを行えるようにすることが改善策であるなら、「切り分けが効果を上げていることを測れる指標」がKPIである、ということになります。

技術課にエスカレーションすると時間がかかる→エスカレーションしなくていいようにSDで切り分ける→技術課へのエスカレーション数が減れば効果あり

ということで、技術課へエスカレーションせず対応完了になった問い合わせの割合となるわけです。

こういう問題では件数の減少」と書きたくなりますが、問い合わせ量は一定ではないので、「測定期間中の問合せ総件数に対して、エスカレーションなしに完了した件数の割合で測定する、という点も注意が必要ですね。

設問1(3) 問題文

本文中の[a]に入れる内容を、表3中の字句を用いて20字以内で答えよ。

設問1(3) 解答例

完了日時欄が”対応中”または”受付”

設問1(3) ポイント解説

[[SDの改善]の(2)最終解決で整理した内容を振り返ります。

  • 『問合せの受付日から完了日まで・・受付日含めて5営業日以内』ルールを設定
  • 4営業日を経過しても対応が完了してない問い合わせを”目標未達のおそれ”として抽出

表3で上記の状態を見つける方法を考えます。
日時に関する項目は「初回回答日時」列と「完了日時」列の2つですね。

初回回答ができてないものは「初回回答日時」の項目が「-」となっていることがわかります。
しかし、それだけはありません。
「完了日時」の項目が「受付」となっています。

表3の注3)を見ると、”受付”とは受付後から初回回答前まで示していると書いてあります。
初回回答ができてないものは、完了日時が「受付」である、というになります。

次に、対応が完了していないものを確認する方法です。
同じく表3の注3)に”対応中”とは初回完了後から対応完了前までと書いてあります。

ということで、この2つを解答すればOKですね。

設問1 (4) 問題文

本文中の下線(ウ)で実施すべき対策案の内容を、20字以内で答えよ。ただし、KPIに関する内容は除く。

設問1(4) 解答例

定期的な顧客アンケート調査の実施

設問1(4) ポイント解説

ちょっとストレート過ぎて逆に迷ってしまいますよね。
問題文が「A社に実施した顧客アンケートをきっかけとして取り組むことができた」と書いてあって、設問で「必要な対策案を」と言われると、「アンケートそのものじゃない何かを探す?」と戸惑ってしまいそうです。

出題の意図としては「今回は単発でA社にアンケートをしたけど、改善サイクルが生まれるので定期的に実施するように」と、「不定期」か「定期的」かというところを強調したいのだろうと理解しました。

設問2 [FAQ掲載方法の改善]について

設問2 問題文

本文中の下線(エ)で設定したKPIは、どのような内容と考えられるか。40字以内で答えよ。

設問2 解答例

SDへの問合せ総件数に占めるFAQに掲載されている問合せ件数の割合の減少率

設問2 ポイント解説

設問1(2)と形式的に似ている問題ですね。うった施策について的確な効果測定の方法を問う問題です。

「より多くの利用者が自ら疑問を解決できるように改善」した、ということなので、FAQを見て自己解決した人の割合が増えていることを確認したいです。

しかし、FAQを見て自己解決しました!という連絡を利用者がしてくることはないです。(してきても迷惑ですね)

解答方法を考えるために、もう1度問題文を読んでみます。

  • FAQを見れば利用者で解決できる疑問が問合せの10%ある

ということは、例えば「FAQを見れば利用者で解決できる疑問が問合せが5%になりました!」ってなれば、「おー、効果あったじゃん」ということになりますね。

ということで、FAQに掲載されている問合せの件数割合の減少率がKPIとなります。

設問3 [本サービスの改善]

設問3 (1) 問題文

本文中の下線(オ)についてJ氏が、”達成が危ぶまれる事象の有無を確認する必要がる”と考えたきっかけになった利用者の意見を選び、表1の項番で答えよ

設問3(1) 解答例

3

設問3(1) ポイント解説

J氏が「達成が危ぶまれる」と思ったカタログ目標値は、『平日9:00~16:00に送信された名刺は送信後60分以内に顧客DBに登録』でしたよね。

カタログ目標値が「60分以内」なのに、アンケートで「1時間近くかかるんですけど」というのがありますよね。
もう少しで1時間を超えてたかも、っていう事象ですからね。
表1の項番3です。

設問3(2) 問題文

本文中の下線(カ)について、データ分析によって把握すべき情報は何か。40字以内で答えよ。

設問3(2)  解答例

名刺画像の送信から顧客DBに登録されるまでの時間帯別の平均待ち時間

設問3(2) ポイント解説

(1)の解答の通り、「カタログ目標値60分」を守れない可能性あるわけですが、ではどのようなデータを分析すればこれを回避できる策が見つかるか、ということです。

表1の項番3では「朝9時台と16時直前」に「1時間近くかかる」と書いてあります。
ということはそれ以外の時間はすんなりDB登録できている、ということになりますよね。

60分が守れない「時間帯」を把握することで対応をうてるのではないか、と考えましょうという問題です。

以上