[解説]ITサービスマネージャ試験 2018年(平成30年)秋期 午後1 問3 テーマ:サービスデスク

[解説]ITサービスマネージャ試験 2018年(平成30年)秋期 午後1 問3 テーマ:サービスデスク
目次

テーマ:サービスデスク

出典:平成30年度 秋期 ITサービスマネージャ試験試験 午後1 問3

ITサービスマネージャとして、インシデント管理手順を遂行する能力、プロセスを改善する能力を問う問題です。

問題文の構成

  • 序文
  • [インシデント対応の概要]
  • [イシンデント対応のフロー及びインシデント対応の手順]
  • [エスカレーション手順における問題点とその改善策]
  • [タイプ1の比率向上への取り組み]
  • [サービスデスクの業務拡大]

序文

  • 情報サービス会社A社でIaaS事業部がクラウドサービス事業を展開している
  • ITインフラ群がA社システムセンタにある。
  • 技術課が変更作業とインシデント対応を行っている

問題のテーマがサービスデスクなので、取り扱う内容は変更要求やインシデント発生時の対応についてということなりますね。

[インシデント対応の概要]

  • インシデント受付を技術課から、新設するサービスデスクに転換する。
  • 技術課が解決手順をノウハウDBに登録する。
  • 手順の追加は技術課がおこなう
  • ノウハウDBでは対応できな場合は技術課に解決を依頼する
  • 表1 インシデントのタイプを3つに分ける。

今までは技術者がインシデントの受付をしてきたけど、サービスデスクを作って一次対応をしてもらおう、ということです。

表1で種類ごとの役割が明記されています。

ノウハウDBで解決できるとき、できないときのムーブの違いを押さえておきます。
さらに技術課に依頼した後の対応も2パターンある点も理解しておきます。

[イシンデント対応のフロー及びインシデント対応の手順]

  • 図1 インシデント対応フロー サービス利用者/サービスデスク/技術課の関係
  • 表2 インシデント対応手順 インシデント管理プロセスのフレームワーク

図1インシデント対応のフロー

割とシンプルで一般的なフローですが、あえて図で示しているところが気になります。
登場人物は「サービス利用者」「サービスデスク」「技術課」であること、連絡の方向と連絡関係を整理して理解しておきます。

表2 インシデント対応手順

インシデント管理プロセスのフレームワークに則って、それぞれのプロセスごとの対応内容を記載してあります。

  • 記録
  • 優先度割り当て
  • 分類
  • 記録の更新
  • 段階的取り扱い
  • 解決
  • 終了

この流れはITサービスマネージメントにおける基本的な知識なので、午後2でも活用できると思います。

[エスカレーション手順における問題点とその改善策]

  • サービス報告の一環で「解決時間」を報告する。
  • 解決目標時間は達成している
  • サービスデスクが定めた回答期限に遅れることがある

「サービス報告の一環で解決時間について調査」はITサービスマネージメントにおける継続改善プロセスにあたります。

調べてみたら、どうやら目標値を守れなくなりそうな事象がある、ということに気づくわけです。
サービスレベルを損なうような兆候を早期に見つけて未然に手を打つ、ITサービスマネージャの重要なお仕事ですね。

サービスデスクの対応状況

  • 問題点は「催促しても遅れる」
  • 解決策は「組織的エスカレーション」。責任者から依頼する。

サービスデスク観点での説明です。
サービスデスク:「これ回答来てないけど、急いでもらえます?」
技術課:「あー、すいませんちょっとほかの作業が合って遅れてます。すぐやりますのでちょっと待ってくださいね」
翌日
サービスデスク:「結局、技術課から回答来なかったな・・・。課長!これ全然回答来ないんですけど」
課長:「あー、またかー。急ぐように言っとくよ。」
という、現場の日常が目に浮かびます。

技術課の対応状況

  • 問題点は「ほかの計画的作業を優先せざるを得ない」
  • 毎日始業時に当日の作業計画を策定している。

一方、技術課では・・・

技術課:「よし、朝礼やるぞー。今日は、計画通り○○時から××のメンテをして、△△時には□□の切り替え準備・・・」
数時間後
サービスデスク:「これ、回答がまだなんですけど。」
技術課:「(あ、そういえば連絡来てたけど作業が立て込んでて回答できてなかった)」
技術課:「わかりましたすぐやりますね。(計画作業遅らせられないし、終わってから回答するか)」
翌日
技術課:「結局昨日は計画作業で1日終わった・・。」

という、これまた現場の日常風景ですよね。

[タイプ1の比率向上への取り組み]

  • タイプ1の比率を上げてインシデントの平均解決時間を短くする
  • 2つの改善「検索容易性」「登録内容の充実」

タイプごとの解決時間に着目したところが、さすがITサービスマネージャS氏というところ。
『タイプ1の解決時間は短いので、タイプ1の比率を上げよう』というのが施策です。
タイプ1は技術課に頼ることなくサービスデスクでクローズできるもののこと。当たり前といえば当たり前ですが、施策の理由を明確に言語化する意味で「タイプ1は解決が早い」という表現は、午後2でも活かせるので頭に入れておくとよいでしょう。

検索容易性

  • 解決策がノウハウDBに登録されているのに検索でヒットしなかった
  • AIで検索ヒット率をあげる

ノウハウDBを見たら解決できるのに、ノウハウDBから見つけられなかったパターンに対する施策。

サービスデスク:「この件、サービスデスクではわからないので技術課さんお願いします」
技術課:「いや、これノウハウDBにありますよ」
サービスデスク:「え?あ、ほんとだ。これのことですか?キーワードで引っかからないしわかりにくいっすね」

のやつ。

登録内容の充実

  • タイプ2について、「速やかに解決手順を指示できている」
  • タイプ3でもサービスデスクが解決できるものがある。
  • 解決できるものには2つの分類。「再発性がある」「サービス変更時に発生する」

これは、技術課が解決方法をサービスデスクに伝えているんだけど、ノウハウDB化されないやつ。
頻発しないから、というのが「再発性の有無」

サービス変更時に発生、は「これをやるとこれが起こる(ことがある)」のやつ。

[サービスデスクの業務拡大]

  • 技術課の技術者の業務量が増加
  • サービスデスクの役割を拡大して、技術者の業務をサービスデスクに移行する。
  • 移行するのは「変更作業の一部」
  • サービスデスクの体制強化と教育は実施可能と判断

設問1 [エスカレーション手順における問題点とその改善策] について

設問1(1)問題文

本文中のaに入れるエスカレーションの具体的な内容を30字以内で答えよ。

設問1(1)解答例

設問1(1)ポイント解説

機能的エスカレーションと組織的エスカレーションの理解を問う問題ですね。

問題文で、「S氏は、サービスデスクと技術課の対応状況について、次のように整理した」とあり、文中でも、サービスデスクと技術課のそれぞれの観点で整理された内容が書いてありました。

本文中の空欄aがあるのは「サービスデスクの対応状況」なので、サービスデスク観点で解答を作ります。
サービスデスク観点では、「回答期限を付けてるのに、期限を守ってくれない」という状況であり、サービスデスクからみた組織的エスカレーション策は、役職上位者から技術課へ「優先的に対応」を依頼する、ということになります。

設問1(2)問題文

技術課の課長が、本文中の下線(ア)で調査すべき内容を、40字以内で答えよ。

設問1(2)解答例

作業計画策定のときに想定されるインシデント対応の作業時間を確保していること

設問1(2)ポイント解説

技術課の課長は『技術者が策定する当日の作業計画について調査』を行っていますね。
作業計画の「何について」調査すべきなのか、ということを答える必要があります。

ポイントは[エスカレーション手順における問題点とその改善策]の(2)技術課の対応状況に書かれている以下の内容です。

「大半は・・・回答期限内で対応できる」
「変更作業を計画的に実施している・・・後回しにしてしまう」

着手しさせすれば回答できるけど、予定された作業が詰まっているからできない、ということですよね。
「いや、ほかの作業があるんですぐにはできないっすよ」的な回答、現場ではよくあるうえに、これが積み重なって部署間の軋轢が生まれるっていう、胸が苦しくなるような設問です笑

ということで、課長としては「ちゃんと回答のための時間も取ってるか?」の確認が必要になります。
なので、調査すべきは「時間を確保しているか否か」ということですね。

設問2 [タイプ1の比率向上への取り組み]について

設問2(1)問題文

本文中の下線(イ)でS氏が提案した技術課において実施するノウハウDBへの登録の内容を、ヒアリング結果に着目して、30字以内で答えよ。

設問2(1)解答例

サービスを変更した際に想定されるインシデントの解決手順

設問2(1)ポイント解説

下線(イ)の直前に「これら以外に必要な」と書いてあります。
「これら」とはタイプ2、タイプ3の解決手順をノウハウDBに登録することを指していますよね。

ヒアリング結果がまとめられている箇所を探してみます。
[タイプ1の比率向上への取り組み]の(2)登録内容の充実、がヒアリング結果のまとめですよね。この内容を詳しく見ていみます。

すると、タイプ3がさらに2つの要素に分かれている、ということが書かれていますよね。
「再発性がある」「サービス変更時に発生する」の2つのパターンでしたよね。

で、「再発性がある」ものは解決手順をノウハウDBに入れましょう、ということで、先ほどの「これら」に含まれているわけです。

そうすると、「これら」以外にあたるのは、タイプ3で「サービス変更時に発生する」インシデント対応ということになります。

設問2(2) 問題文

本文中の下線(ウ)で技術課の課長が、技術課にとっても利点があると考えた理由を、40字以内で述べよ。

設問2(2)解答例

技術課が行うインシデント対応の作業負荷が低減するから。

設問2(2)ポイント解説

サービスデスクがノウハウDBを見てクローズまで持っていてくれれば、技術課が対応する時間が減りますね。
もともと、[インシデント対応の概要]の冒頭で、技術課の業務効率を上げるためにサービスデスクを作る、って言ってるわけで、サービスデスクが自力で解決できることこそ技術課のめりっとなわけです。

なので、解決手順をノウハウDBに登録するために一時的に技術課の負荷が上がったとしても、そのあとは楽になるというわけです。

なんとなく、当たり前に感じることをあえて設問にしているのは、IPAがITサービスマネージャに求めている要素だからなのではないか、と思いました。

それは、ITサービスマネージメントにおける施策を関係者間で合意するにあたっては、「関係者双方に利点がある」という要素を忘れるなよ、ということではないかと。
ITサービスマネージャとしての重要な観点であることを示したいのではないかと思う次第です。
午後2の論述内容でチラっとこういう要素を書けたら加点になるのかな、と(想像です)

設問3 [サービスデスクの業務拡大]について

設問3(1)問題文

本文中の下線(エ)で技術課が実施すべき作業の内容を、40字以内で述べよ。

設問3(1)解答例

サービスデスクで実施できるように標準変更の手順を整備する。

設問3(1)ポイント解説

ITインフラ群の変更作業の一部をサービスデスクに移行するときに、技術課が実施すべき作業ということですね。

技術課の作業手順が必要なので、整備してもらうということになります。
解答例を見て違和感があるのは「標準変更の」というワードです。これって本文中には登場してないですよね。

こういうったところは、自前の知識で補完する必要があることを解答例で示しているのかな、と感じました。
おそらく「標準」という言葉がなくても正解になるとは思いますが、こういったところは頭の片隅に置いておくといいかもしれません。

設問3(2)問題文

サービスデスクの業務拡大は技術者だけでなく顧客にも利点がある。考えらえる顧客側の利点を、30字以内で述べよ。

設問3(2) 解答例

変更要求の依頼から実施までの期間が短くなる。

設問3(2)ポイント解説

[サービスデスクの業務拡大]の内容としては、「ITインフラ群の変更作業の一部」をサービスデスクがうけて、『サービスデスクが行う変更要求の処理は、優先で”低”として行う』ということでした。

問題分にあえて『優先度』を明示していることがポイントです。
表2インシデント対応の手順 優先度の割当てを見てます。

優先度”低”は解決目標時間が8時間に設定されています。

いままでは、『週1回実施している社内の変更審査会の前日までの申請分』について『審査会の承認を受けてから翌日以降の実施』となっていました。

依頼する利用者側からすると、対応時間が大幅に短くなるため、大きなメリットといえます。

この問題は確たる根拠にたどり着きづらいので、試験会場の初見で「実施期間が短くなるから」と自信をもって解答できるかというと、難しいんじゃないかと思いました。

週1回実施している、という事実と、優先度”低”にしましたよ、という事実だけで、「審査会は通らないんだっけ?」とか、気になるところが残っていしまいます。

消去法的に「これ以外に要素がないので書いておくか」くらいの自信度で解答する問題だと思います。

以上