[解説]ITサービスマネージャ試験 2018年(平成30年)秋期 午後1 問1 テーマ:サービスの継続性

[解説]ITサービスマネージャ試験 2018年(平成30年)秋期 午後1 問1 テーマ:サービスの継続性
目次

テーマ:サービスの継続性

出典:平成30年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午後 問1

ITサービス継続マネジメントの能力、サービス継続計画の訓練を通した課題発見能力を問う問題です。

問題文の構成

冒頭序文
[システムの運用]
[被災時の事業継続計画の検討]
[サービス継続計画の検討]
[財務会計システムの運用の検討]
[訓練の実施]

冒頭序文

  • 医療品製造と販売をするF社
  • F社の情報システム部は「生産管理サービス」と「財務会計サービス」を提供
  • 生産管理サービスは生産管理システム
  • 財務会計サービスは財務会計システム
  • [表1]サービスの概要 各サービスの提供時間、処理内容
  •  [図1]システム構成 関東/関西システムリソースの配置場所

サービス継続=IT-BCPの観点ですので、「異なるエリア」は教科書的展開です。
生産と財務2系統の話があって、関東と関西の2拠点あるんだな、ということを図1からしっかりキャッチしておきましょう。

表1の注2)にオンライン処理で会計伝票を入力し・・・」と記載がある点に注目。

[システムの運用]

  • [表2]運用スケジュール システムごとのオンライン処理/バッチ処理の時間帯 
  • 注にそれぞれのDB更新ログとフルバックアップデータの保管運用状況が書かれている。

エリアごとのリソース配置を理解したら、次は運用スケジュールです。
BCPの問題では、BCP発動後にどの時点から、どの業務を再開するかを計画しておくことが重要です。
その際に、バッチとオンライン、バックアップの運用スケジュールを正確に把握することが求められます。

[被災時の事業継続計画の検討]

  • 経営層から経営企画部へ「関東被災想定のBCP策定」指示
  • 経営企画部L氏登場。
  • [表3]事業影響度分析の結果 RTO/RPO/RLOの分析結果提示
  • 生産管理業務のRPOは「障害発生時」、財務会計業務のRPOは「前日の就業時点」
  • 生産管理業務、財務会計業務それぞれの被災時勤務時間提示
  • L氏からITサービスマネージャのR氏に「サービス継続計画」の依頼

通常時の運用スケジュールを把握したら、次はBCP発動時のRTO/RPO/RLOです。

[サービス継続計画の検討]

  • 財務会計システムを関西の生産管理サーバーで運用する計画
  • 当日中に確認する財務会計業務がある。生産管理業務完了後、財務会計業務を実施する。
  • 4時間は勤務する。
  • 生産管理システムのオンライン起動処理、オンライン処理、オンライン処理停止のあと、財務会計システムのオンライン起動処理、オンライン停止処理
  • そのあと、生産管理システムのバッチ処理、財務会計システムのバッチ処理

[財務会計システムの運用の検討]

  • 財務会計業務のRPOを「障害発生時」にしたい要望
  • 前日のフルバックアップデータから、当日のオンライン起動処理直前の状態にデータを復元
  • 障害直前のDB更新ログで会計DBを回復

[財務会計システムの運用の検討]

  • 財務会計業務のRPOを「障害発生時」にしたい要望
  • 前日のフルバックアップデータから、当日のオンライン起動処理直前の状態にデータを復元
  • 障害直前のDB更新ログで会計DBを回復

[訓練の実施]

  • 関東本社サーバ室被災の訓練
  • 緊急連絡先の担当者と連絡が取れない
  • 連絡先情報が本社ファイルサーバーにある

設問1 [サービス継続計画の検討]について

1-(1) 財務会計システムの運用上の問題点を、サービス継続の観点から、40字以内で述べよ。

解答例
本社サーバー室が被災するとバックアップを含むデータを喪失する。

1-(1) ポイント解説

[サービス継続計画の検討]の(3)で、「本社サーバー室から財務会計システムのフルバックアップデータを取り寄せて・・」と記載されています。
本社サーバー室が被災して復旧用データが入手できないことが問題点であることが回答できればOKです。

1-(2) (1)の問題点の解決策を、35字以内で述べよ。

解答例
本社サーバー室が被災するとバックアップを含むデータを喪失する。

1-(2)ポイント解説

IT-BCPの基本は分散ですよね。
関西地区にもサーバー室があることが示されているので、2拠点でデータを保管することを考えて解答を作成します。

現実的な方法を想像すると、VPN越しに関西地区のサーバー室にあるテープ装置に、関東地区のテープ装置と同時にバックアップデータを作成する、ということなのかなと。

毎日、東京から大阪へ物理的に宅配便で磁気テープを配送する・・ってことはないのかなと。
まぁ、試験の解答には関係ないところではありますけど、ちょっと気になりました笑

1-(3) 財務会計システムのオンライン処理の時間を最も長くする場合のオンライン処理の開始時刻と終了時刻を答えよ。
ここで、生産管理システムのオンライン処理時間帯は、13:00~16:00とする。
また、財務部及び情報システム部の勤務時間並びに各システムの予備時間帯は考慮しなくてよいものとする。

解答

開始 17:00
終了 24:00

問題文の中で、『生産管理システムのオンライン処理停止のあと、財務会計システムのオンライン処理起動』とかいてありました。
一つずつ処理の時間を追ってみます。

生産管理システムのオンライン利用時間 利用終了 16:00
生産管理システムのオンライン停止処理 30分 16:30
財務会計システムのオンライン起動処理 30分 17:00
財務会計システムの利用開始 利用開始 17:00

17:00に財務会計システムの処理を開始できます。
ここまではシンプルですよね。問題は終了時刻です。

ポイントとなるのワードは『勤務時間は考慮しなくてよい』『勤務時間帯は、夜間も含めて柔軟に対処』の2つ。

RLOの「4時間」の縛りもなく、「夜間も含めて対処」なので、終了時間は別の要素から導き出す必要があります。

そうすると、制約条件になるは翌日の生産管理オンライン処理開始まで、ということになりますね。

生産管理オンライン処理開始の13:00に間に合うように、逆算していきます。

ここで、「バッチの処理時間」が重要になります。
何もなければ会計オンライン処理をギリギリまで使えますが、バッチ処理があることが明示されていますので、平常時のバッチ処理にかかる所要時間を計算します。

生産管理システムのバッチ処理 18:30~翌1:00(25:00) 6時間30分
財務会計システムのバッチ処理 20:30~翌2:00(26:00) 5時間30分

逆算していきます。

生産管理システムオンライン開始処理時間 30分 12:30~13:00
生産管理システムバッチ処理時間 6時間30分 6:00~12:30
財務会計システムバッチ処理時間 5時間30分 0:30~6:00
財務会計システムオンライン停止処理 30分 0:00(24:00)~0:30

ということで、財務会計システムオンライン処理はギリギリまで使って0:00(24:00)ということになります。

設問2 [財務会計システムの運用の検討]

2-(1) 本部中の下線(ア)という要望が実現した場合の、財務部の財務会計サービス利用者にとっての利点を、40字以内で述べよ。

解答例
オンライン処理で入力した障害発生時点までの会計伝票の再入力が不要になる。

2-(1) ポイント解説

RPOが「前日の終業時点」だった場合、業務再開フェーズに最初に行うのは、災害当日の始業から災害発生までの処理を手作業で行うということになります。

利点は、この「手作業」がなくなることであることはすぐにたどり着けると思います。
ただし、ポイントは「手作業」「何をするのか」を具体的に表現しなくてはいけないところです。

財務部のみなさんは財務会計サービスを使って「何をしているか」を探してみると、表1の注2)に『財務会計業務では、財務会計端末からオンライン処理で会計伝票を入力し・・・』と書いてあります。

ということで、会計伝票の手入力がなくなることが利点という説明ができればOKです。

2-(2) 財務会計システムのDB更新ログの運用上の問題点への対策について、財務会計システムのオンライン処理で変更する内容を、35字以内で述べよ

解答例
DB更新ログを支社の生産管理サーバーのストレージにも取得する。

2-(2)ポイント解説

「財務会計システムのDB更新ログの運用上の問題点」が何かを考えます。

DB更新ログが話題になっている理由を把握しておくため、RPOを障害発生時点とするための手段を確認します。
[財務会計システムの運用の検討]セクションに記載されている通り、「磁気テープのバックアップデータ」と「DB更新ログの情報」が必要とわかります。

DB更新ログというワードから、遡って確認すると、表2運用スケジュールの注1)に「財務会計システムでは、DB更新ログを財務会計システムのストレージに記録」にたどり着けます。
磁気テープと同じで、被災拠点に復旧用データがあることになるので、ここが「問題点」だとわかりました。

対策は?ということになるので、別拠点である「支社」に更新ログを置ければよい、ということになります。

設問3 [訓練の実施について]

3-(1) 本部中の下線(イ)で行う連絡表の内容見直しについて、30字以内で述べよ。

解答例
複数の担当者の連絡先を登録するように変更する。

3-(1) ポイント解説

連絡表の問題点は、「代表が1名だけ」ということと「最新化されてない」の2つ。
問題文中に「定期的に連絡先が最新かどうかを確認することにした」とあるので、「最新化」の対応以外を答えることになります。

となると、「代表者が1名だけ」だと、代表者に繋がらないときに誰に連絡を取るべきかわからないことが問題となりますので、その対策を答えることになります。

3-(2) 本文中の下線(ウ)について、図1中の装置を活用してできる対策を,40字以内で述べよ。

解答例
最新の連絡表の情報を支社ファイルサーバにも保存し、被災時でも参照可能にする。

3-(2) ポイント解説

これも、「磁気テープ」「DB更新ログ」と同じく、必要なデータ被災するリスクの対応策ということになります。
図1の装置を活用してということころだけ注意して、解答文中に「支社ファイルサーバー」という文言をいれることがポイントと言えますが、ITサービスマネージメントの知識問題としては難度は高くないのではないかと思います。

以上