【書評】コンビニ人間 – 個性と社会規範、人生の選択を考えさせる作品
- 2022.05.15
- 読書
今回は、私がとても印象に残った小説「コンビニ人間」をご紹介したいと思います。この作品は、個性と社会規範、人生の選択を考えさせる鮮やかな物語で、読者に多くのインスピレーションを与えてくれます。以下に、あらすじと私の書評をご紹介します。ぜひ手に取ってこの素晴らしい作品をお楽しみください。
【あらすじ】
物語は、コンビニで働く36歳の主人公・古倉恵子を中心に展開されます。恵子は、周囲の人々からは異端と見られるほど、コンビニの仕事に没頭しています。ある日、恵子は、彼女と同じように社会規範に疑問を持つ新入社員・白羽を出会います。この出会いをきっかけに、恵子は自分の人生を見つめ直し、自分自身の選択と向き合うことになるのです。
【書評】
「コンビニ人間」は、個性と社会規範、人生の選択について考えさせられる作品です。恵子がコンビニの仕事に情熱を持ち、自分らしさを見つける過程は、読者に勇気を与えます。また、恵子と白羽の関係を通じて、社会の期待と自分の願望との間で揺れ動く心情がリアルに描かれています。
この作品を読むことで、私たちは自分自身の個性や価値観を再認識し、人生における選択肢について考えることができます。また、他人との関係や社会規範に対する考え方も見直すきっかけになるでしょう。
「この世界は異物を認めない。僕はずっとそれに苦しんできたんだ。」
この小説の一節です。もうこの一言で僕の心はわしづかみでした。
僕もそう感じることがあった。だいぶ前からあったし、いまでももちろん、ある。
おそらく多くの人がそういう瞬間を持っていると思います。
「普通」と「特別」。異物。
物の感じ方や、行動や習慣といった日常のちょっとしたことでも
ほかの多くの人が当たり前と感じていることと違ったり、当たり前が分からなかったりする、そういった経験は少なからずあると思います。
そういうとき、笑われたり、修正を迫られるわけですよね。
それ、おかしいよ、とか。変だよとか。
敵意も悪意もないのに、感じ方や生き方が他の人と違うっていうだけで、認められない。
共通点が多い=普通。
共通点が少ない=変わり者。
変わり者=悪いこと。
だから、人と違うのはよくないから、なんだかそれを直さなきゃいけない。
まるで自分が悪いことをしているみたいに感じちゃうってこと。
そして、そうした経験を積み重ねることで知識として当たり前を覚えていって、
多くの人と同じ反応、同じ行動ができるようになることを、成長とよんだりします。
でも、普通と異物の違いってなんだろう。
この本は、普通と異物の2面の存在をはっきりと描き出してます。
コンビニでマニュアル化された「普通」を覚えてふるまうことで周囲に認められる主人公。
そこに安ど感を感じ、そこに自分自身を埋没させようとする姿は、
僕にも他人事ではない、何か強い共感を覚えさせる、そういった内容でした。
オススメポイント
普通を強いる社会が独創性を褒める矛盾
日常生活では「普通」を求められます。
アートはむしろ自由に自分の興味や発想を追求することが許され、むしろそれをこそ求められます。
創作という最終的なアウトプットがあってもなくても、アートというのはその矛盾の発露なのだろうと、なんとなく理解しています。
つまり、「変わっている」「変なやつだな」といわれる窮屈な世間生活に疲れ果てないために、
自分の気持ちの赴くまま、感じていること、思っていることを表現したり、
共感できるなにかを感じ取ったりする行為がアートの機能なのではないかと。
アート=普通と特別の衝突
アートの本質は衝動と表現に至るまでの道のりだと思いますので、その衝動のタネとなる「自分自身」を大切にすること、信じてあげること、そして、できるなら世間生活の自分、つまり「普通の性格」と衝動根源たる自分、これはもしかしたら「異物」「変わり者」といわれる性質のものかもしれないですが、その2つの微妙なバランスのなかで、みんな生きているのかもしれないなと思いました。
そういう意味で、SNSはうまく使えばこの2つをすみわけれられますが、逆に世間的な自分に食い尽くされて疲弊してしまう危険性もある。
世間生活が苦手な僕は、実名で実生活を公開するようなSNSの利用は避けています。したいとも思わない。
実名を出さないで、自分の心の赴くまま表現をするこのスタイルが自分というタネを大事にメンテナンスする、そういう行為に感じられています。
そんなあなたにこそお勧めしたいのです。
日々生活をしている実社会が、本当は欺瞞に満ちた世界で自分が感じる違和感が本当の世界を求める自分自身の声だったら・・。
そんなことに思いを馳せたくなるストレスフルな社会で頑張っている、そんなあなたにこそオススメしたい一冊です。
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